鑑賞性のデザイン

今日も少し別の話をします。
先日発表になりましたが、ユーイングから発売されている家庭用水耕栽培器[GreenFarm]が10/3から東京の二子玉川にある話題のお店「蔦屋家電」にてミントを自宅で育てる楽しさを伝える期間限定ポップアップストア[MINT STAND by GreenFarm]をオープンする事になりました。
今、商品はモノづくりからコトづくりに変遷し、その体験価値に対してユーザーがお金を支払うという20世紀の物づくりの次へと本格的に移行してきています。戦後の物の無い時代から大量消費の欧米化を迎え、バブルの隆盛から衰退までを経験し、その後二度の震災や世界同時多発テロ、また幾度となく続いている戦争を知る事により、本当の豊かさは物だけでは得られないという事の答えが「体験」だと私は考えています。
震災直後に最初の水耕栽培器のデザインをご依頼いただいた時、そのベースモデルはまるで電子レンジのようでした。小さな窓、部品を囲う為のブラックボックスの筐体。中をのぞかせるさながら「小さな植物工場」でした。そこに私は疑問に感じました。
自宅で植物を育てる時に必要な事は、育っていく過程を「鑑賞すること」ではないのかと。それが実現できるデザインが必要では。
ベースモデルのデザインはその大事な部分が欠落していた事に対し、「全方位どこからでも植物が鑑賞でき、作物が主役になるデザイン=鑑賞性のデザイン」としてコンセプトを掲げ、全方位をアクリルで閉じる事で、虫が入ってこないけれどもまるで何も囲いが無いかのような開放的なデザインをフラッグシップ機、そしてエントリーモデルとそのデザインを継承していき、デザインも性能面も各方面でとても良い評価を頂いています。まだまだ知らない人も多いと思いますが、やはり目の前で植物が育っていく様を見る事はとても元気に前向きになれますし、ほとんど機械がやってくれますが自分で育てた(見守った)野菜はスーパーで買う野菜よりもとてもおいしく、またありがたいものです。
私が幼少期の頃は、郊外に住んでいた事もありますが自然に触れ合う機会は多かった方だと思います。しかし今、虫が触れない子供が増えたり親が苦手な野菜を食べない世代(親が口にしないものは当然子供は食べない)であったりと私の体験とは少しづつ変化してきていますが、そういう現代の都市の抱える問題を解決するのもこの商品だと思っています。こういう「前例のない最初のプロダクト(私はファーストワンと呼んでいます)」をデザインさせてもらえた事はとても光栄ですし、またファーストワンで「鑑賞性のデザイン」というコンセプトにたどり着けたのはとても幸運だったと思います。良いコンセプトは思考の深淵の先にある時もあれば、無常にもない時もある訳です。
そうしてできあがった商品の「体験」を体験するべく、蔦屋家電さんでイベントを開催する事が出来る事を心より喜んでいます。一人でも多くの方に触れて頂き、その素晴らしさを体験してほしいと思います。ご都合の合う方は是非ご来場ください。
[MINT STAND by Green Farm]
会期:2015年10月3日[土] – 9日[金]
場所:蔦屋家電二子玉川店2F イベントスペース(E-Room1)
住所:東京都世田谷区東玉川1丁目14-1 二子玉川ライズショッピングセンター テラスマーケット
webサイト
http://www.greenfarm.uing.u-tc.co.jp/events/2015_10/