輝ける節。

7/1-7/4に、中国は杭州(Hangzhou)にて行われた竹製品のワークショップ[Archiver Age藝手匠心的工作營‬]に台湾の盟友ウェスリー(郭志佳)に招待され、メンター(指導者)として参加しました。ウェスリー自身もデザイナーであり、またこのイベントの主催者であり、現地政府と交渉し予算を組み、プログラムを組み、多くのゲストと学生をアテンドしています。主に学生は杭州の大学生もしくは卒業間もない社会人です。
杭州には竹が多く存在し、竹そのものが成長が早くまた丈夫で中国では建設現場の足場としても使われます。その特異な構造と生産性、環境に良い素材という観点から古くから親しまれ、家具などに転用されてきました。ただ日本の現状と同じく、伝統工芸としては衰退傾向にあるようでその今後を今の若者と一緒に考えるワークショップです。メンターは台湾人デザイナー三人と日本人三人です。
Day1
杭州の空港でウェスリーと残りの二名のデザイナーと合流し、車に揺られること2時間。日が落ちる前に着いたのは竹の美しい霧がかった山間の街。まずは近くの村の食堂にて開始を祝福する晩餐。竹の産地ならではですが、とてもおいしい筍(日本の物よりもとても若く細いもの)を調理した物が出てきました。産地と食事が近い距離にある事は共生という観点からとても素晴らしいと思います。お借りした部屋は日本人デザイナーと相部屋で、湿度が高い場所だからか建具の変形により多少建付けが悪かったりしますが、景色の美しい窓と広い部屋にとても満足しました。
Day2
今回メンター達が持つ時間はそれぞれ二時間を二本。その中にセミナーとワークショップを行うという物です。私の一回目の出番は二日目の午後。ウェスリーより日本のデザイナーが何を考えているかを教えてほしいという要望があり、私が取り上げたテーマは「簡素」と「観察」でした。この日は簡素の日。物事やデザインの要素はどこまでそぎ落とせるかというお話から。その簡素を生む為に必要な事を日本人が幼少の頃から言われてきた言葉を交えながらレクチャー。必要以上に盛らない事。増やさない事。ギリギリまで減らしてそれを徹底的に整理する事。そして彼らに筆箱を出してもらい、その中身から必要な物だけに減らすというワークショップを行いました。どうしても外せない物だけにした時に、残った物と捨てた物からその人のライフスタイルが見えてくるのです。
結果はほとんどの学生が携帯とちょっとの筆記具を残すという結果に。仕事をしている人はラップトップも残しました。中国では携帯電話にお金をチャージしてそれで色んな支払をする事が普通であり、携帯電話が財布と同じレベルで必須アイテムとなっていました。またアドレスフリーが進んでおり、職場に留まる事なく仕事ができる事も想像よりも先進的だと思いました。彼らはこういう手法をあまりやったことがないようで、とても楽しんでやってくれました。中国のデザインはどちらかというと古来より加飾のデザインだと思いますが、引く事からはじまるデザインは彼らにはとても新鮮でいて、彼らのセンスにはまる内容でした。若い人はグローバルに色々な物を見るのでとても感受性豊かに様々なデザインを吸収していきます。
自己紹介の時にある学生が、欧州の大学院に進学したいと言っていて少し相談に乗りました。そういう聡明で熱意ある学生にはこれからも支援し続けたいです。また多くの学生が私のスライドで使っていたフォント[小塚ゴシックPRO EL]を気に入っていたようで、そういう質問も多数来ました。ただ中国語のテキストでは使えないので近い中国語フォントを教えてあげたりしました。中国語はいいフォントがあまりないらしく、デザインのいいフォントやその情報はとても貴重だそうです。そんな事をしながら夜は更けていつの間にか眠ってしまいました。学生は22:30まで課題をしていたようです。
Day3
宿舎のそばにバスケットコートがあり、日頃の運動不足を解消する為に早朝にバスケットボールをする事にしました。朝の運動は気持ち良く、久しぶりにした割にはシュートは入りましたが、運動と湿度で私の髪はより曲がりくねりコントロールを失いました。曲がりくねったまま朝食を食堂で済ませいざ三日目へ。今日の私のテーマは「観察」。物に着手する前に、そのロケーションや人、素材を観察する事で問題を解決する事ができるというメソッドを伝えました。彼らはとても柔軟に課題を吸収しこなして行きました。物からスタートせずに物の周囲を見る。またその力を存分に借りるデザイン。彼らには体験が無いデザイン手法だったようです。
彼らはこの課題とは別に、最終課題をやらなければならず毎晩遅くまで作業をしています。日を跨ぐ事もしばしば。その傍ら彼らは日本のデザインについてや、ミラノサローネについて、またそれ以外の様々な質問を英語で私にしてくれます。それは今も続いています。彼らはとても貪欲に様々な物を吸収したいと思っています。普段受け持つ日本の学生とは芯の熱さが違うなぁと思いました。与えられてきた人の性か、それとも人口の多い中国競争社会だからこその貪欲さなのか。とにかく私には彼らは眩しく見え、とても応援したくなりました。夜中(AM1:30?)まで彼らと情報交換をして講習最後の日の為に眠りました。
Day4
今日は私のレクチャーは無く、台湾から来られた竹家具職人の陳先生(Konstantin GrcicがYiiの為にデザインした43という椅子は陳先生が製作したそうです)の竹と台湾の歴史のレクチャーが始まり、午後は一緒に行った三上さんの日本のデザインや感性についてのレクチャーを行い最後はこの数日の日本人が出したワークショップの仕上げの時間でした。時間が来て最後のプレゼンが終わり、その後の個人的な講評の時に、私がいくつかのリーダーシップなどの点を指摘すると、ある学生は突然悔し涙が溢れ、自分を責めはじめました。そしてそのチームの他のメンバーはそれを慰めている。
こういう情景はいつ以来でしょう。彼らは今という時間の中で精一杯輝いているように思いました。こういう試練が節となり、力強く、しなやかで真っ直ぐ上へと成長していくのだと私は思います。だから何があっても継続してほしいし、彼らが継続するには、我々日本チームの今後の活躍が不可欠だという自覚もあります。負けずと精進したいと思う。あっという間に時間も無くなり、彼らとの最後の瞬間は写真と日本でもしたことが無いサインの嵐で迎え、我々講師陣は幹部の宴会へと強制参加となりました。その後吞みすぎてパスポートを紛失した事は唯一の汚点ですが。ともあれ、台湾デザイナー達、企業の皆さんもこんな良い機会を与えて頂きありがとうございました。
実は明日7/11から三日間、また杭州でのワークショップにメンターとして参加する事になったのですが、先日の学生の何人かは参加してくれるとの連絡がありました。彼らの人生の中での二つ目の節になれる事を光栄に思い、また色んな事を話してきたいと思います。
Thank you everyone. See you soon.