模型で起こることは製品でも起こる。

左は消毒液スタンドの発案直後のプロダクトデザイン業界ではペーパーモデルと呼ばれる物。簡単に言えば模型。
右は工場で制作していただいたスチール(鉄)製の最終仕様に近いプロトタイプと呼ばれる試作品。
高さの差は置いといて、今この二つは共通の課題を抱えています。
段ボール製の方を作成した時、ある箇所にゆがみが出ていてその時は「段ボールだからか」とあまり気にもしませんでしたが、同じ工法でスチールで制作しても同じ問題が発生して驚いたというお話。
試作品の役割は外観の確認や、人間の行動に対して適切なサイズや形状であるかを確認することがほとんどですが、工法を同じ原理にし、精密に模型を作ったとき、材料は違えどそこにかかる応力等は近しく、同じ問題が生まれました。
これをポジティブにとらえたならば、工法を最終と近しくし、精密に模型を作れば、それが量産時に及ぼす影響をコストやそれ以外の負担をかけずに短時間でシュミレーションできるということです。噛み砕いていえば「模型で起きたことは製品でも起こる」ということ。
工業デザイン(プロダクトデザイン)において、模型や試作を作る意味は上記のとおりたくさんありますが、模型や試作をしてみないと見えて来ないことや、そこから気が付くことはとても多いので、若いデザイナーや学生の方は模型や試作を作るという行為を怠らないようにしてほしいですし、事実現場では相当数の模型を作ります。その比率で言えばコンピュータの作業と同じくらい(当社比)ですので、模型慣れを経験が浅いうちにしておくことが重要な気がしました。
あと、一般の方で製品を買ってくださる方もきっとこうした過程に存在する様々な物語は、見聞きすれば製品の見え方も変わってくると思いますので、出来る範囲でこういうことはどんどん公開していきたいなと思います。そうすれば、デザインで物を買って使用するという体験価値がもっと大きなものに変わってくると思うわけです。